佐藤正(漫画家)の現在は?顔や年収,師匠の新沢基栄さんとの関係について

確かに主人公は用務員を馬鹿にしています。ただ馬鹿にしているのは主人公だけではないのではないでしょうか。

このような表現が、現実社会の本質を突く内容であることを容認しなかったことも問題の一助になると私は思います。

私がこの内容を知って思ったのは、「佐藤正さんはこの表現をしたときに『用務員のことを馬鹿にしてもよい』と考えていたかどうか」についてです。

佐藤正さんのギャグは非常に子供向けです。また子供向けでありながら合理性をもったオカルト要素を持っています。

それは「燃える！お兄さん」の設定を考えればわかると思います。

幼少の時に生き別れて山奥で暮らしていた主人公が都会で生活を再開するといった内容は現実にはもしかしたらあるかも知れませんが、殆ど、あり得ない内容です。

そして普通に考えれば主人公は、自分が何故生きているのか、といった人間が社会で生活する上での基本的な能力が欠如しているのです。

このことから主人公が担任教師にひどい扱いを受けていることは推測できます。

しかし、主人公は相手が担任教師なので、やり返すことをしなかったのではないでしょうか。

つまり社会における階級制度を理解していたのは主人公の方なのです。

そこで、主人公にとって「担任教師」が「用務員」になったので、今までの復讐を行ったのでしょう。

そしてその結果、主人公は用務員から手ひどいしっぺ返しをくらったのです。

つまり、この漫画で一番馬鹿にされているのは主人公なのです。その一番社会的に地位が低い主人公が社会の本質を突いたことが、ギャグとして成り立たない方が私は問題だと思います。

何故なら、ここには日本人が教育や差別についてどのように考えている一助になるからです。

また、「週刊少年ジャンプ」の作品群では珍しい、学園ものでありながらラブコメ要素が薄いです。何故ならメインのヒロインが主人公の妹だからです。もちろん、物語は兄妹間の恋愛にも発展しません。

そしてこの漫画には多くの女性キャラクターが登場しますが、片思いの状態が続くだけで、恋愛まで発展するカップルはほとんどいませんでした。

その理由は、この漫画は関係性があらかじめ崩壊しているからだと思います。なので、新たな関係性が生まれるときは、この漫画が終わるときとつながるからでしょう。

「燃える！お兄さん」に非常に破壊的な内容のギャグが多いのは、新しく生まれた関係性を「いかに作らないようにするか」がこの漫画のテーマになっているからです。

永い間会わなかった子供がいつの間にか大人になって帰ってきた。このようなテーマは日本には森鴎外の「山椒大夫」や太宰治の「津軽」などがあります。

これらのテーマは基本的にフィクションの部分を持ちながら一種感動的な内容へとつながるような物語構造をしています。

「燃える！お兄さん」は漫画の構造を使用しながら一種の反貴種流離譚の形式を持っています。

しかし、「燃える！お兄さん」の場合は主人公には一切のインテリジェンスが欠如した状態で登場します。そこにあるのは野生の力の名を借りた、単なる暴力装置としての主人公の姿でした。

主人公が行動することによって、常に巻き起こる暴力の嵐。シンプルに考えると新たな関係性を作ればよいのですが、それを作らない障害を作者は反貴種流離譚の形で描いているのです。

そこにあるのは関係性の狭さです。自分が受け入れられない世界だけを求めて主人公は生きています。インテリジェンスが皆無の人間の行動と、それに伴う人間社会の邪悪さを描いたギャグは差別意識を持たずに読むことは困難なことだと思います。

「燃える！お兄さん」の連載は1991年まで続きました。単行本で全19巻になります。

その後1992年には「爆発！宇宙クマさんタータ・ベア＆菊千代くん」を「週刊少年ジャンプ」にて連載。単行本全2巻。

1993年から1994年までは「NEWRAL NETWORK ミリンダファイト」を「週刊少年ジャンプ」に連載しています。単行本では全１巻です。

1995年には「メダカの王国」を「月刊少年ジャンプ」で連載。単行本では全6巻です。

佐藤正さんの現在について

佐藤正さんは「漫画図書館Z」で単行本化された全作品と単行本に収録されなかった作品の一部を公開していましたが、2017年には取り下げとなっています。また作者の意向によって「サイボーグ用務員さんの巻」は掲載されていなかったそうです。

その後、文庫版の「燃える！お兄さん」の出版をした後はあまり表だった活動はしていません。文庫版の最終巻には、お兄さんについて語るのはこれが最後だと引退を示唆してもいるそうです。